まず、指しゃぶりが子どもの発育に与える影響にはどのようなものがあるのか 、くわしくみていきましょう。
指しゃぶりがあるすべての子どもに口腔内への影響が出るわけではあり ませんが、長期間続くほどその影響は大きくなります。 具体的には、①歯列・咬合への影響、
②口腔への二次的な影響、③口元と側貌への影響、④皮膚への影響などがあげられます。
1 歯列・咬合への影響
指しゃぷりが歯列や咬合へかかわる要因としては、 表1のようなものがあげられ、 これらにより影響の出方は異なります。また、そのほか、 骨の硬さや筋肉の強さ(年齢にも関連する)、遺伝( 持って生まれた額顔面骨格型)なども関係します。 具体的に歯列や咬合にどのような影響が現れるかみていきましょう 。
表Ⅰ 歯列・咬合へ影響する指しゃぶりの要素
●指しゃぶりの仕方( 親指または他の指をどの向きでどこまで深く入れるか)
●頻度(寝付く前だけ、泣いたときだけ、日中も暇ならつねに…・ ・・など)
●どのくらいの時間吸っているか
● 吸う強さ
●継続して吸っている期間
など
歯列弓狭窄(V字型歯列、高口蓋)
長時間、指を吸う圧が強いと、 類の筋肉が臼歯を内側に押すために左右の臼歯間距離が短くなり、 歯列の幅が狭くなります(歯列弓狭習)。そのうえ、 上顎前歯を前方へ押す力が加わると
U字型の歯列がV字型に変形します。 そして口蓋のくぼみが深くなり、高口蓋になります。
歯列弓狭窄
親指を口腔内の奥まで入れ、側方から強く吸うことで頬の筋肉が乳臼歯を内側に押し、上顎の歯列弓が狭窄。
V字型歯列
親指を浅く強く吸うことで側方からの持続的な圧と、前歯を前方に押す力によりV字型となった上顎歯列。
高口蓋
歯列弓の狭窄により深くなった口蓋のくぼみ。
開咬
指の腹面と背面が支点となり、 上下顎の前歯部を歯根方向に圧下させるために、 上下前歯の間に隙間ができ開となります
(垂直的開)。日歯部は陵んでいるにもかかわらず、 前歯部が上下で接触しないために、 前歯で咬み切ることができない状態です。
オーバーバイトをともなわない垂直的開咬。
反対咬合
人差し指や中指を1本または2本の指で下顎前歯に引っかけて指を 吸うと、 指の腹面で下額を引っ張るために下題を前方に誘導する力が加わり 、下顎前歯の唇側傾斜を引き起こします
(前歯部反対咬合)。
下顎全体が前方へ押され、下顎前歯は唇側に傾斜し、反対咬合になっている。
上顎前突
親指腹部を上に向けて吸うパターンがもっとも多くみられます。 右図のように親指の腹を吸うことで上額前歯が前へ押されるため、 唇側に斜し、歯根方向に圧下されます。 親指の背面が下顎前歯と接触することで、 下顎前歯は舌側に斜します。
上顎前歯が唇側に傾斜し、下顎前歯が舌側に傾斜するため大きなオーバージェットとなっている。
正中偏位、片側性犬歯部/臼歯部交叉咬合
上顎歯列弓の狭窄により上下の歯列の幅径が合わなくなった結果、 乳犬歯が早期に接触して咬合時に干渉するため下顎を横にずらして 咬合するようになります。その結果上下の正中がずれ、 犬歯部や臼歯部が交叉合になります。
上下の正中のずれがあり右側前から三番目の犬歯が交叉合となっている。
上下の正中のずれがあり、右側前から三番目と四番目と五番目が交叉咬合となっている。
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